« 暗いところで待ち合わせ | トップページ | 「木曜日」24号はこんな感じ »

2008/04/13

同人雑誌評を巡って―そして入稿

Bungakukai0805胡壷・KOKO6号に掲載されていたひわきゆりこさんの「象のテラス」が、「文學界」の「同人雑誌評」に取り上げられたのは、3月号だった。評者は松本徹氏。ところが、今月発売の5月号で、大河内昭爾氏が再度取り上げて、あまつさえベスト5に選んでいる。とても面白い出来事だと思う。
もちろんそれは「象のテラス」がある水準に達しているから相成ったわけだが、そうした水準を超えたところでは、もう評者の好みの話なのであり、「ベスト」などと言いつつも、優劣と言いうる絶対的な批評などない、と暴露したことになるだろう。じつをいえばそんなことは言うまでもない、とも言えるが、「ベスト」と言い、半年に一度「同人雑誌優秀作」を選出している同人雑誌評の評者のなかでもリーダー格にある大河内氏が、改めて、同人雑誌評という場で、そうした優劣の在りようを示したことには驚きさえ感じられる。まして、その書き振りが面白い。

 ひわきゆりこの作品は前から感性の良さを感じている。つまり文章のリズムが好きなのである。三月号で松本徹氏が取り上げているが改めて論じたい。「象のテラス」(「胡壷」6号、福岡市)にも自然体のゆとりを感じる。とりとめのない話の運びなのに魅力があって、私のぼんやりした気分に逆らわない。・・・以下略

「感性の良さを感じ」ると言いながら、「好きなのである」と書き、それはまるで、普遍的な「感性の良さ」を否定し、あくまで大河内氏の基準に沿う「感性の良さ」に還元してしまう。あまつさえ「私の・・・気分に逆らわない」からこの小説は優れている、というわけだ。ここには、ひわきさんの「感性の良さ」を看取できなかった松本徹氏にたいする遠慮が見えるようでもあるが、そうした遠慮がちな口振さえ、批評の普遍性、作品優劣の絶対的な普遍性の否定が、批評者自らによって吐露されてしまった結果なのだといえよう。

こんなことをしてしまったからには、この際ベスト5とか同人雑誌優秀作なんてことは止めてしまうのが妥当ではないか? とさえ思えてくる。自らの同人誌評とのかかわりを巡って三十余年を振り返り、昭和60年当時にはかろうじて認められた文学界による同人誌への期待が、懸賞(新人賞)制度の確立によって今やすっかり失われたことを認識するらしい今回の書き出しを見ても、そう思う。
「同人雑誌評」を継続するなかで、これと思う書き手には、「文學界」は無理でも、「季刊 文科」にでも精力的に書かせればよいのではないだろうか? まぁ、今でも例えば玄月といった書き手を輩出しているといった自負があるのだろうし、「季刊 文科」にそうした作家輩出ができないこともわかっている、ということなのだろう。

ともあれ、ひわきさん、ベスト5おめでとうございます。
なんだかんだいっても、やっぱり嬉しいですよね。私も嬉しかったですもの。まして今回は、こうした経緯があったのだから、まさに僥倖。喜んで当然だと思います。

ちなみに、今回の「同人雑誌評」では、「季刊 遠近33号掲載難波田節子さんの「ハンモックのある庭」も取り上げられている。

今回、自宅就労という閉じ籠り生活をしていたら、7日に7日であることに気づかず、「文學界」」の発売日を逃してしまった。
ところが、大宮のルミネに入っていた書店が潰れ、ヴィレッジ・ヴァンガードになってしまい、大ターミナル駅であるはずの大宮でさえ、「文學界」を入荷する書店は、駅構内ecuteのリブロかロフト内のジュンク堂しかなくなってしまった(ちなみに、ロフトの中にもヴィレッジ・ヴァンガードがある。ヴィレッジ・ヴァンガードが嫌いではないが・・・)。あげくが、どちらも入荷数がすくないらしく、発売日を逃したら、とたんに品切れだった。結果、新宿まで足を伸ばしたときにようやく手に入れられたというわけ。こんな僥倖が起きたときにかぎって・・・。
Gunzo0805 それで、文芸誌を眺めていたら、「群像」が第二回の大江健三郎賞を発表しているというし、さらに新人賞の予選通過者のなかにH.F.さんのお名まえがあるというので、手にとってみると、なんと円城塔が新作小説を書いて巻頭を飾っているではないか。というわけで、思わず購入した。
円城塔の新作「烏有此譚」は、冒頭部分を覗いたが、どちらかというと、「つぎの著者につづく」より「オブ・ザ・ベースボール」の系譜のようで、いやはや・・・、また退屈のようだ。とはいえ、まだまだ冒頭部分しか読んでいない。
H.F.さん、おめでとうございます。一次通過だって嬉しいですよ。私も昔の「早稲田文学」でしたが、一次を通ったときには、思わず「早稲田文学」を買ってしまいました。まして、とりわけ競争率が高いという「群像」ですから、充分誇っていいでしょう。

ところで、いよいよ巻頭言が届かなかったため、さぞやお忙しいのだろうから、これ以上せっつくのも申し訳なく、また、いつまでも気にかけておられたら、それはそれで申し訳なく、この際すっぱりと諦め、師匠に諦めたとメールの上、巻頭言のページを減らして目次からはじまる形に、すべてのページ番号を打ち直し、もちろん目次も改め、PDFを再作成、さらに背表紙幅も0.1ミリ狭めたものを作り直して、印刷屋さんにメールで入稿した。もしかしたらまた、ゲラが届くかもしれないが、ひと段落がついたということ。

フリーになって初の仕事も、思いのほか梃子摺っていたのだが、こちらもなんとかひと段落。終わったとは言い切れないが、8割がたは終わったと言えそう。

木曜日」にせよ、お仕事にせよ、どちらもこのままOKなら助かるなぁ・・・。

|

コメント

うーん、ここまで書いてしまうLydwine.さんは偉い!
というか、結構、神経が太い!
私が三十年以上続けて来た定期購読をついに止めた理由のうちのひとつが、ここに書かれています。

投稿: euripides | 2008/04/13 23:18

恐縮ですcoldsweats01
Bunkamuraドゥマゴ賞や、あるいは最近の早稲田文学新人賞のように、選考委員を各年ごとにひとりに絞って、あくまでその選考委員の基準(趣味)に沿い、賞を与える文学賞があり、また、大江健三郎賞のように、ずっとひとりの選考委員に任せるという賞もありますね。昔、いわゆるフォークやニューミュージックと呼ばれた人たちが、テレビを嫌い、また音楽賞を拒否していましたね。
私は、芥川賞と直木賞はなくしたほうがよいと思っていますが、文学賞が商業的であることを否定するつもりなど、資本主義経済下の日本に生きていれば当たりまえのこととして、毛頭ないのです。ようするに、そうした賞とはきわめて制度的なシステムなのだから、その制度をちゃんと確立しなければいけない、と思うのです。ベスト5とか優秀作というのは、賞と変わらないわけですから、その基準を明確にするべきではないか、ということです。
優秀作の選考は、4人の合議で行なっているのだから、まだよいでしょうが、各人ひとりひとりが選んでいるらしいベスト5は、やめたほうがよいように思えます。

とはいえ、「象のテラス」のベスト5入りは言祝ぎたいのですよ。こんなことを書いてしまうと、なにかケチをつけるみたいで、恐縮なんですけど、選ばれればやっぱり嬉しいですもの。

毎月買っているのだから、まして聞くところによると、定期購読すると、首都圏では6日に手に入るらしいので、定期購読すればいいだけのことなんですけど、意地のように本屋買いにこだわっております。本屋通いが趣味だから、といったほうが素直かな・・・。「文学界」を仕入れる本屋さんのためにも。

投稿: Lydwine. | 2008/04/14 01:20

 いや、ありがとうございます。遅くなりましたが。
 それにしても「早稲田文学」で一次通られたことがあるのですか。なんというか、「早稲田文学」へ応募というのは私のLydwine.さんへのイメージそのままのような気がしてしまうのですが、復活した新しいのは買われましたか。
 私はどうも、もともと批評○間系の人があまり好きでない(ある時期から食傷気味に)のと、あの表紙とグラビアで買うのをためらいつづけています。最先端の情報を得るという意味で計っておいたほうがいいのでしょうけど。
 「群像」はあの座談会しか読んでないのですけど、自分の名前が載るというのは気恥ずかしくもうれしいものですね。
 「文學界」の「同人雑誌評」については、貴重な存在なんですから、もっとしっかりやっていただきたいものですよね。

投稿: H.F. | 2008/04/20 17:43

H.F.さん、ほんとにおめでとうございます。「群像」は応募数が他の新人賞と比べても格段に高いですから、かなり厳しいはずです。
新しい「早稲田文学」は、まだ見ていないのですよ。春の文学フリマに出店するようなので、それを楽しみにしています。
予選通過は、以前の織田作之助賞の3次通過もありましたが、織田作賞は、最終をふくめると6次までありましたので、いわゆる文芸誌の新人賞でいえば、1次通過くらいなものです。
以前はどの文芸誌にもあった同人誌評が、いまや「文学界」にしかありませんから、感謝もしているし、なんとか続けて欲しいとも思っています。でも、例えば、「文○思潮」なんて、杜撰な同人誌評もあるわけで、それを考えれば、あまり批判的なことは書くべきではないのだろうな、とも思いますが、まぁ、なんの権威も力もない私だから言えるというところで・・・。

投稿: Lydwine. | 2008/04/20 18:26

こんばんは!
 前コトバ抜きに、文学界の“同人雑誌評”がなくなるんだって!? 驚きですね、、、時の流れ、、、訪れというのかな?
私自身がこの手の雑誌を購入しなくなって久しいのだから、ものを言えた義理では無いのですが、、、ここから世に出た作家もずいぶんいたと思うけど、無くなると聴いて、実感としては、いいだろ、仕方ない、“評”するにも、同人雑誌が無くなった情況の昨今なのだから、続ける、、、ここまで続いた方が不思議といってみいいのでは無いでしょうか。それより、私はこれに換えて、今後は“自費出版文学評”欄を「文学界」に新設してほしい。
 有力?な某版元が消えたそうだけれど、いまも~依然として自費出版は盛んなようであり、容易に大出版社がアマチュアの文学書籍を受け入れてない現状を見るにつけ、かっての同人誌ほどではないにしても、結構優れた作品も有るように仄聞する。 
 “評”があることで、無名の書き手、あるいは一生に一度きりの出版かもしれない作品に、少なからぬ希望と光りを与えるであろうと思う。
 創作という個人的「事業」。それを側面から元気付ける意味で、是非文学界がその役を担ってほしいものです。お願いします。
  

投稿: 奔環歌 文香子 | 2008/05/06 00:34

あっ!
 後の祭りですが、先の投稿、偶然開いたページが「読書雑記」欄だったもので……別にタイトルURLをいま発見して恐縮しています。

 同人雑誌、意外にも(井のなかの蛙にして)多いのに驚いています。
 世の中を見くびっていてご迷惑、ご不快の皆様にお詫びします。ご容赦のほどを。

投稿: 奔環歌 文香子 | 2008/05/06 00:46

奔環歌文香子さま、コメントをありがとうございます。
「同人雑誌評」打ち切りについては、聞き及んでおります。それについては、すでに簡単に記事にしていますが、なにより、「文学界」の大河内氏の文章を読んでから、考えたいと思っています。

投稿: Lydwine. | 2008/05/06 00:46

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)